YAESU FC-707 を整備する
自作・実験工程のメモとして
15 Nov.2023
(最終更新:2023/11/29) POWER計の目盛を確認しました。
最近、短波放送(BCL)でもしてみようかと思いつき、専用アンテナは無くても最適な受信環境で受信できる方法は無いかと考えていました。
アマチュアバンドのアンテナは、外付けアンテナチューナー(AH-4)を設置していますが、放送帯で同調するわけにはいきません。
そこで放送帯に同調できる方法としてマニュアルタイプのアンテナチューナーを試してみることにしました。
受信中心に使うので、自作も考えましたが今更シャーシ加工や部品収集も面倒なため、オークションでそれなりのアンテナチューナーを入手してみました。
入手にあたっては、HF帯(1.9MHzや50MHzが含まれていない)限定や、約40年ほど経つ古い品で動作未確認状態で出品されているためか、比較的安価で手に入りそうなYAESUのANTENNA TUNER FC-707(FC-700も同等品、以下FC-707と略す)を選択しました。
FC-707を使って、短波放送帯(6MHz帯の「ラジオNIKKEI」等)での同調点はnanoVNAのSWR特性画面を使ってそれなりに合わせることができましたが、そもそも受信設備の手元で同調しても10m以上の同軸ケーブルを含めた同調点の為、受信結果については特別良くなったという印象は有りませんでした。
残念ながら当初目論んだ短波帯受信にはあまり活かせそうに有りませんが、ダミーロードとしての活用やSWR/POWERメーターとして使えるため、入手したFC-707を整備してみることにしました。
作業工程をメモとして掲載しておきます。
13.5V対応の改造や、SWR/POWER検出部の修理をした後のFC-707
Edit by bluegriffon 3.1
FC-707はメーターの照明とダミーロードへの切換にDC 8Vの外部電源を必要としています。
メーカーの取説にも13.5V対応の改造記述が有りましたし、8Vの電源を個別に用意することが面倒なので、メーカーのマニュアルにある改造をすることにしました。
また、メーターランプの13.5V対応については、入手性の難しいランプよりLED化の改造に代えることにしました。
改造にあたっては、八重洲無線のホームページにあるFC-700のマニュアルを参照しました。
■.メーター内部のランプの状態
1.ネットのBLOGに書かれている方がいらっしゃいましたが、本品もメーターの熱でカバーの一部が変形していました。
2.メーターランプには8Vで70mA程度の電流が流れており、直列に抵抗を入れる13.5V改造より、LED化をした方が安心だということがわかります。
■.外したランプと、代替えのLED(電流制限ダイオード付)
1.LED(OSM5YK3Z72A 秋月:I-11633)への電流は、8Vまたは13.5Vを使ったとしても同じ輝度になるように電流制限ダイオード(CRD E-103 10mA)を挿入しています。
2.LEDにはエンパイヤチューブを被せて、ランプ形状に近づくよう成型しました。
■.LEDランプの最終形(LED光拡散キャップ(3mm)白)
1.実際に灯けてみると光のムラが有ったので、昔購入していた「LED光拡散キャップ(3mm)白」を被せて完成としました。
2.この状態で、8V/13.5Vとも約9.4mA(実測)の電流で落ち着いています。
■.電球時の明るさと代替えのLEDとの比較
若干明るく見やすくなったように感じます。
■.ダミーロード切換リレーの13.5V改造
1.手持ちの関係で、秋月の超小型 金属皮膜抵抗(100オーム1W)を直列に入れて完了です。
2.リレーの型番は読み取れませんが、ネット上にあるFC-707(英語版)のマニュアルにNECのMR31と記述が有り、内部抵抗から9Vのタイプのようです。
3.13.5Vを加えたとき、リレーの電圧は約9.4Vとなり、MR31の基準内に収まっているようです。
2.SWR/POWERのメーターの振れが少ない現象への処置 |
13.5V対応の改造もできたので、ダミーロードを使ってPOWERでも測ってみようとしたところ、メーターが少ししか振れないことがわかりました。
SWRのセット時にもフルスケールの位置まで振れない状態で、ネットの情報からSWR/POWER検出回路のダイオード(1SS16)が不良になっている事例が有ったので同様の事だろうと当たりをつけました。
早速交換しようと1SS16を探しましたが、ネット上の販売ページを見つけられません。
そこで、手持ちの1N60に交換してみたところ、少しは改善したように見えたものの電力測定で半分程度の値しか示さないため、最終的にはオークションで入手した1SS16を使って修復することができました。
処置:ダイオード(1SS16)2本交換にて復旧。
■.SWR/POWER検出部(処置前)
青〇部分のダイオードを交換しました。
■.1N60に交換したときのパワー計(7MHz:RTTY 10Wを入力時)
一番下の目盛りで、約6Wあたりを指示しています。
■.1SS16に交換した後のパワー計(7MHz:RTTY 10Wを入力時)
10W近くを指示しているため、特に調整せず完了としました。
■.1N60と1SS16の特性比較(ネット上のデータシートより抜粋)
1.最初に代替えとして付けた1N60はゲルマニュームタイプとショットキータイプがあるらしく、私は昔から持っているゲルマニュームタイプを使ったようで、IFの値が相当低かったようです。
2.掲載しませんが1N60ではショットキータイプを使っても、IFの値は1SS16には届かないようでした。
3.最初オークションで、1SS16の代替え品という1SS99を手配しましたが、翌日になると1SS16の出品が有ったので、1SS16を使って処置し、1SS99は使っていません。
4.データシート上では、1SS99は1SS16に近いように見えますので、1SS99でも良かったかも知れませんが試していません。
3.SWR/POWER検出回路のダイオードの特性確認 (2023/11/22) |
メーターの振れは上記処置で修復しましたが、ダイオードの不良状態や代替品として手配した1SS99がどのような特性を示すのかが気になり、その特性を測定してみました。
測定にあたっては、簡易測定器のため目安でしかありませんが、手持ちの「LCR-T4」を使いました。
測定数(サンプル測定含む)は、不良と思われる品1SS16 x 2本・手持ちの新品1SS16 x 2本・代替で手配した1SS99 x 2本としました。
測定結果を見ると特性値の違いが確認できますが、測定精度や測定値の条件(If 等)は不明です。
推測でしか有りませんが、長年に亘って送信電波の通過部分で検出機能を果たすため、一気に不良に成るのではなくその特性が少しずつ劣化してくる傾向が有るかも知れません。
■.測定に使用した測定器 LCR-T4
新品のリード線を曲げたくなかったので、ミノムシクリップを使いました。
■.不良品と思われる1SS16(FWD,REF側の識別不明)
Vf はそれぞれ 602mV と 720mV の値を示しました。
■.新品の1SS16 2本(現在取り付けてある品の特性ではありません)>
こちらのVf は、どちらも 286mV を示しました。
■.代替で手配した1SS99 2本(本機に取り付けた実績無し)
こちらのVf は 269mV と 268mV の僅差ですのでバラツキの範囲と言えるかも知れません。
他のアンテナチューナーのPOWER目盛を確認する機会が有りましたので、本器でも同じように確認してみました。
測定における条件等は、以下の通りです。
POWER計の調整には手持ち品であるクラニシRW-315Aを使用しました。
このRW-315Aは2016年入手時に修理した後、測定したいときに引き出してきて使っている品で較正等はもちろん実施していません。
しかし、無線機の最近の無線機にある出力表示(%のバー表示)と比較しながら見ても、それなりの値を示していると感じています。
そのようなことから、RW-315Aを基準に合わせることにしました。
また、50Wを超える出力の送信機は無く、フルスケールで確認をしていません。
50Wを最大電力として合わせていますので、その分の誤差は大きいと思います。 |
■.大電力目盛で50Wに調整
50W機より50W出力 |
RW-315A 300W(上目盛) |
FC-707 150W(上目盛) |
■.大電力目盛で20Wを確認
50W機より20W出力 |
RW-315A 300W(上目盛) |
FC-707 150W(上目盛) |
■.小電力目盛で15Wに調整
50W機より15W出力 |
RW-315A 30W(下目盛) |
FC-707 15W(下目盛) |
■.小電力目盛で10Wを確認
10W機より10W出力 |
RW-315A 30W(下目盛) |
FC-707 15W(下目盛) |
■.小電力目盛で5Wを確認
10W機より5W出力 |
RW-315A 30W(下目盛) |
FC-707 15W(下目盛) |
以上、ほどほど合っているようです。
(1)その他
大幅な改定・追記用